雨穴さんの新作『変な地図』を読みました。結論から言うと、めちゃくちゃ面白い『地図ミステリー』でした。
今回は「地図そのものが謎」になっていて、ページをめくるたびに「この違和感、何?」「この書き込み、どういう意味?」が積み重なっていきます。しかも図(イラスト)が多いので5時間くらいで読みやすく、テンポよく進むのも好みでした。

ミステリー的には★★★★★の中で、★★★★ですかね(読んだら切なくなるって印象です。もうひと捻りあれば★マックスでした。)


YouTube「第一章(栗原さんからの謎解き)」がおすすめ

読む前でも読んだ後でも刺さるのが、雨穴さんのYouTube「『変な地図』第一章(栗原さんからの謎解き)」です。
地図を見せられて「この謎、解けますか?」という形で始まるので、推理好きなら絶対楽しいやつ。

「本→動画」で答え合わせも良いし、「動画→本」で没入するのもアリ。個人的には、動画で“違和感の入口”を掴んでから本を読むと、最初から一気に乗れました。


『変な地図』はどんな話?

物語は大きく言うと、次の2つが並走していきます。

  • 鉄道で起こった不可解な出来事(一見“人身事故”として処理されている事件)
  • 主人公・栗原が辿る、祖母の死と「変な地図」の由来

最初は別々の話に見えるのに、読み進めるほど少しずつ距離が縮まっていく構造が気持ちよくて、ページをめくる手が止まりませんでした。


※ここから先はネタバレを含んでいますので、未読の方は読まないでください。


矢比津鉄道社長・大里幸助の「人身事故」の正体

物語冒頭、社長の大里は母娘山トンネルで目覚め、始発が迫る中で必死に脱出を試みるも死亡。事件は当初「酔って迷い込んだ事故」と処理されます。

犯行の実態は、トンネル内の非常口付近でサスマタみたいな道具で固定して被害者を電車通過の瞬間にサスマタが外れて線路側へ押し出したということですが、誰が実行したというところが謎です…。

実行犯で、帆石水永作(あかりの父親)を前面に出しているけど、

脅迫されて実行するにはあまりに手が込んでいると思うので、第三者がいたんじゃないかと思うのですが、誰がというと…そこまで決定打がなく分からないところです。

栗原が追う「祖母・知嘉子の自殺」と、変な地図

主人公は大学生の栗原文宣(22歳)。
元気だった祖母(知嘉子)が急に落ち込み、自殺に至ったこと、そして遺品として変な地図が残されていたことからなぜ?自殺したのかを知る為のミステリーに発展していきます。

真相は、祖母は真実に耐えられず自殺したと思っています。

集落の男尊女卑(女性が自由を奪われ、男たちに虐げられる構造で過酷な労働を強いられていたため、日常的に“逃げ場がない”状態だった。)から逃げ出す為に妖怪や植物の書いた地図を村の女達で作って、知嘉子を脱出させる道しるべにして逃がしたが、その後、妹喜見子は男どもを落石事故に見せかけて殺害する計画を実行してしまう。

そして、自分の起こした行動が集落のみんなを不幸にしてしまった自責の念から自死に至ったということですね。


栗原さん22歳、人生経験濃すぎ問題

主人公の栗原さん(22歳)が、行動力も胆力も強くて「人生経験どうなってんの…?」ってなりました(笑)
若いのに判断が大人だし、状況への踏み込み方がすごい。ここも読みどころです。

他の企業に落ちまくった栗原さんは、小田笠設計舎に入社して、変な家に続くように設計士になるということでしょうか

変な家とかで、パーフェクト超人となってる栗原さんが、22歳のころの人間味あるところが出てすごく感情移入してました。

やはり、自殺した祖母や母を重ねるところなのかなって

祖母の残した『変な地図』は謎解きだけじゃなく、栗原さんが“知ってしまった後も生きていく”ために少し大人になる成長物語にも見えました。



まとめ:『変な地図』が刺さるのは、“妖怪”ではなく“人間の構造”が怖いから

『変な地図』は、妖怪や怪談っぽい見た目で読者を引き込みながら、最後は「怪異の正体=人間が作った仕掛け」として回収していくミステリーでした。
しかもその仕掛けは、ただのトリックではなく、閉鎖的な共同体の中で女性たちが生き延びるための知恵であり、同時に後年まで尾を引く“罪”の記録にもなってしまう。ここが切ない。

もう、妖怪より人間(醜悪な村の既存概念)の方が恐ろしいって思いましたよ。

鉄道トンネルの“人身事故に見せかけた殺人事件”も、祖母・知嘉子の自殺も、単発の事件ではなく「土地の歴史」と「家族の連鎖」によって結びついていました。
読み終えた後に残るのはスッキリした解答というより、「知ってしまった人が壊れる」タイプの余韻です。

だからこそ、ただ怖いだけじゃなく心に残りました。

だれも報われないこのやるせなさというか、切なさがいっぱいのミステリーでしたよ。

本書は、図が多くて読みやすい一方で、テーマはかなり重いです。
“地図”という形に残る希望だったものが罪になり苦しめる――

誰も幸せにならないこの二重構造が刺さる人には、間違いなく刺さる一冊でした。